北陸の海沿いのある町。実業家で町の実力者でもある旧家、宇島家の主人、理一郎は、ある朝、海辺でずぶ濡れになって倒れている気憶を失った女を助けた。このひとりの不思議な女を迎え、宇島家の人々の心は様々に揺れる。一人娘の伊代も少女らしいとまどいと興味を抱いた。女手ひとつでこの家を守ってきた祖母の図世は、息子の嫁を早く失ったこともあり、女を家に置こうとする理一郎に異議を唱えず彼女を看病する。理一郎は次第に女に魅せられていき、伊代は幼い頃の母の記憶に胸を痛めながら、大人たちの成り行きを見守る。ある日、理一郎の亡妻の弟、伊代の叔父にあたる征夫が都会の生活を捨てて、この町に帰ってきた。征夫は理一郎に仕事の世話...